子連れサバティカル@シンガポールのビザ取得

2023年度にサバティカル(大学の教員に定期的に与えられる研究専念期間)を取得し、シンガポール国立大学に客員教授として滞在しています。

今回、子供達(小4と年長)にとってもいい機会だと思い、子連れでシンガポールに来たのですが、ビザ取得で大トラブル発生。シンガポールはサバティカルの研究者が家族を連れて入国することがとても難しい国であることが分かりました。

今後の研究者たちの参考になればと思い、ビザ取得までの道のりを下記の通り共有します。

※以下、<要約><概要><詳細>の順に記載しています。
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<要約>

  • 子連れでサバティカル行くなら、SP申請・取得を先に行い、その後、TEP申請・取得をしないとダメ(なようだ)
  • 根拠1:TEP(: Training Employment Pass)取得後、SP(SP:Student Pass)申請を行ったらリジェクトされた。
  • 根拠2:シンガポール人の友人のアドバイスに基づきTEPを一旦破棄。その後、SP申請・取得→TEP申請という順で行ったらアクセプトされた。
  • (<詳細>にて赤字で記したが)、「申請順序」に加え、「親(TEP申請者)のシンガポール国外出国」というのも条件として存在するかもしれないと推測ている。

注1)上記のことは明文化されたルールはなく、あくまで経験則に基づくものです。必ずしも成功するとは限りません。よって「(なようだ)」という表現を使っています。

追記(2023年11月21日):成功例が2例に増えました!我が家と同じケース(お子さんのSP取得が上手くいかなかた)に直面していた大学研究者(日本人)が、我が家と全く同じ方法を試してみたところ無事にSP取得に至りました!明文化されたルールは無いですが、これが「子連れサバティカル@シンガポール」のビザ取得方法だと言えそうです(注:今後、ルールが変更される可能性はある。)

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<概要>

シンガポールでサバティカル(長期滞在)をする場合、ビザの選択肢は2つです。

1.シンガポール国内の大学から給与をもらう場合…EP(:Employment Pass)

2.日本の大学の研究費、助成金、給与を用いて滞在する場合…TEP(: Training Employment Pass)

前者(EP)の場合、給与が一定額を超えていれば、家族帯同が認められ配偶者や子供にはDP(:Dependant’s Pass)というビザが発給されますので、家族帯同が可能です。実際、国内の大学からシンガポール国立大学の医学部のラボに来ている方はシンガポール国立大学から給与を得ている為、ご家族帯同でいらっしゃっています。

しかし、後者(TEP)の場合、家族のDP申請は認められませんので、TEPに紐づけた子供の帯同は出来ません。そして、私も含め殆どのサバティカル(特に文系の研究者)は、受け入れ大学から給与を貰うことは稀なので、後者(TEP)を取得して長期滞在することになります。

そこで我が家は、僕のビザには紐づけず、子供たちは別途、留学生ビザ(SP:Student Pass)を取得して入国することにしました。

僕自身はシンガポール国立大学を通じて、2022年末からTEP取得に向けて準備を進め、

子供たちはシンガポール留学を斡旋するエージェントに依頼して、学校選びからSP申請までお手伝い頂きながらSP取得に向けて準備を進めました。

しかし、結果は「僕のTEPは取得」「子供たちのSPはリジェクト。その後、何度アピール(異議申し立て)をしてもダメ」でした。

下記するように、何度問い合わせしてもリジェクト理由は教えてくれないので、当時、理由は推測するしかありませんでした。思い当たるのは僕のシンガポール国内の所得が0円であることでした。そこで、埼玉大学の学部長が発行した年収と研究滞在予算の合計額を記した書類や、シンガポール国立大学からの招聘レターを証明書として提出しましたがダメでした。

そこで、シンガポール人の友人に相談したところ、MOM(:Ministry of Manpower(注2))で働く友人に聞いてくれ、「TEPが原因でSPがリジェクトされている」「TEPを捨てればSPは取得できるはず」という情報を得ました。

この話をシンガポール国立大学のビザ担当スタッフに伝えたところ、「そんな話は聞いたことない、あなたの労働ビザと子供たちの留学ビザは独立なのだから、TEPがSP却下の原因な訳がない。アピール(異議申し立て)をしたほうが良い。」と言われました。

しかし我が家は、友人の情報を信じて、TEPをキャンセル(破棄)することにしました。すると、何と無事にSPが承認され取得できました。つまり、SP申請に何か不備があったのではなく、TEPが原因だった可能性が証明されました。(これにより、我が家のようなケースはビザ申請に精通している大学スタッフや留学エージェントですら知らないルール(明文化されていないルール)であることが推測されます。)

この時点で、子供のSPは取得でき、無事に学校生活がスタートしました。しかし一方で、僕はTEPを破棄したので、STVP(観光ビザ)での入国となり、30日ごと(延長しても60日ごと[90日認められることは稀])に出国しなければいけない状況になり、1年間のサバティカルをするには不安な状況でした(注3)

そこで、僕はダメもとでTEPを再申請してみました。再申請した当時は、TEPとSPの同時取得は難しく、順序を変えれば大丈夫だとは予想してなかったので、本当に「ダメもと」でした。余談ですが、当時この件を友人に話したところ、「そんなロールプレイングゲームみたいなこと(順序を変えるとクリアできるみたいなこと)あり得ないと思いますよ」と言われました。しかし、結果はTEP申請は承認され、TEPを取得。

晴れて子供と一緒にサバティカル生活@シンガポールをスタートさせることが出来ました(両方のビザを取得するのに要した期間は3か月強・・・この間、眠れない日々が続きました💦)。

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(注2)TEPとSPは管轄官庁が異なります。TEPはMOM(:Ministry of Manpower)管轄、SPはICA(:Immigration & Checkpoints Authority)管轄です。推測ですが、SP審査のプロセスで、子供たちの親の情報(出入国情報やビザの取得情報など)がチェック(おそらく機械処理[コンピュータ処理])されていて、TEP取得者などが自動的にはじかれているのだと思います。SPがリジェクトされた際、ICAに異議申し立てメールを送ったり、ICAを直接2回訪問して異議申し立てのミーティングをしましたが、「リジェクトされた理由は教えられない」の一点張りでした(今思えば、機械処理なので、おそらく面談担当官も詳細な原因は分からないのだと思います)。

(注3)日本やヨーロッパ各国などににある所謂「180日ルール」はシンガポールにあるかどうかは不明(当時、在シンガポール日本大使館に電話で確認したところ、180日ルールがあるとは聞いたことがない。しかし、頻繁に出入りしていると止められるかもしれないと言われました。)ですが、観光ビザで1年間出入りを繰り返すことになり、いつか入国を止められるのではないかという不安が常にありました。

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<詳細>

時系列に詳細を記します。

  • 2022年11月 シンガポール国立大学より"Letter of invitation as Academic Visitor"を得る

  • 2022年12月27日(火) シンガポール国立大学を通じてMOMにTEP申請

TEPは一般的に最大3か月のビザだが、サバティカルの研究者には1₋2年の発給が可能。

※シンガポール国内の他の大学でサバティカルをしている友人は2年発給された。


  • 2023年1月6日(金) TEP申請の許可が下りる。


  • 2月22日(水)International School(G4、K2)の入学許可が下りる。

※当該International Schoolと留学エージェントと共に、SP申請に向けた手続き開始。


  • 3月25日(土) ICAにSP申請


  • 3月28日(火)子供と共にシンガポール入国

※僕自身:TEP(IPA:In-principle approval)で入国

※子供達:長期ビザが発行されないまま観光ビザ(30日間)で入国


  • 3月30日(木)23時 子供達のSPのリジェクトに関するEmail受信

※審査結果の通知が深夜に来ることが多いので、機械処理しているのではないかと推測するに至りました。


4月14日(金)子供の観光ビザ(STVP: Short-term visit pass )の延長申請&受領(30日→60日:5月27日まで延長)

※シンガポールの小学校はSTVPでは通うことは出来ません。入学が決まっていた学校に、SP申請中だから通わせてくれないかとお願いしましたが、ダメでした。その間、子供たちは幼稚園(年長息子)や語学スクール(小4娘)などで過ごしました。

※STVPは入国時(空路の場合)30日の滞在が認められ、最大90日まで延長可能です。


4月20日(木) TEPのキャンセル(破棄)をシンガポール国立大学にお願い


4月21日(金) キャンセルしましたという連絡を大学から受ける。これにより僕のビザはSTVP(観光ビザ)に切り替わる。


5月11日(木) シンガポール出国


5月14日(日) 子供のSTVP再延長(60日→90日)申請


5月15日(月) 

10:30過ぎ(日本時間11:30過ぎ)ICAから(International School経由で)SPの受領(Approved)の連絡

11:30頃(日本時間12:30頃)STVP再延長申請却下の連絡(SPがApproveされたことに伴うものと考えられる)

夕方:SP発行のため、18日(木)のICA訪問をオンライン予約。

※ビザはApproveされた後に、管轄官庁にて正式な発行手続きを行う。

5月16日(火)僕はSTVP(観光ビザ)で入国。


5月17日(水)午後 Notification of Electronic Visit Passのメールが来て僕の30日間の滞在が認められる(出国直後の入国・TEPキャンセル直後の入国だったので、怪しまれて30日間もらえないのではないかと心配していた。)


5月18日(木) ICAで子供たちのSP発行手続き完了


5月29日(月) 子供たち通学開始


6月3日(土) 僕のSTVP延長申請・受領(7月15日まで延長)


6月30日(金) 大学にTEP再申請をお願い(担当者が休み中で7月3日まで返信できないとオートリプライ)


7月3日(月) 担当者が大学の人事課(OHR:Office of Human Resources)に再申請を依頼(3-6週間かかると言われる)。


7月9日(日) 親族の葬儀の為、子供達と一時帰国


7月11日(火)TEP申請が受領(Approved)されたとの連絡を受ける。

※子供たちのSP受領連絡も僕のTEP受領連絡も「僕がシンガポールから出国している時」に来ました。この偶然から、「申請順序」に加え、「親(TEP申請者)のシンガポール国外出国」というのもビザ取得の条件として存在するかもしれないと推測ています。


7月13日(木) シンガポール入国


7月20日(木) 健康診断


7月31日(月) MOMにてTEP再発行。

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以上です。どなたかの今後のサバティカル@シンガポールの参考になれば幸いです。

最後に、繰り返しますが、上記のことは明文化されたルールはなく、あくまで経験則に基づくものです。必ずしも成功するとは限りません。また、シンガポールのビザの要件は頻繁に変更されますので、2023年7月以降、同様の方法でビザ取得できる保証はありません。

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